「エモーショナルな理由で選ばれるクルマ」
まずは目の前に現れた新型。ひと目見て「悪くない」と思いました。いや、素直にカッコいいです。デザインで失敗したクルマは、デザイナーが色々なエクスキューズをしたがるもの。一方、今回のデザインの担当者は自信たっぷりに「とりあえず見て下さい」と言ったまま、多くを語りませんでした。確かに、なだらかなルーフラインの美しさとリアスタイルのまとまりの良さは、写真よりも実物のほうがより明確に感じ取ることができると思います。実際に見ると、余計な説明がなくとも、いいなと直感できると思います。
先日、後身に社長の座を譲り、自らは会長職に就くと発表したばかりの豊田章男社長は「プリウスは残すが、コモディティ化して、タクシー専用車とすれば環境対策はさらに進むのでは」との考えを社内で示したそうです。市街地を得意とするハイブリッドがタクシーとして全国の市街地で活躍することになれば、環境にも配慮できるはず。
ところがプリウスの担当エンジニア達は「あくまでもエモーショナルな理由で選ばれるクルマにしたい」と反発。これまで以上に高い環境性能を目指すのは当然として、まずは「一目惚れするデザイン」や「上質でスポーティな走り」が自慢のプリウスでありたい、と主張したのです。このスタイルを見れば、彼らの思いの一端が理解できると同時に、ユーザーにとっても満足度が高い存在だと言えます。
つぎのエモーショナルポイントといえば走りです。ドライビングポジションを決めてからシートベルトをする。ゆったりとしたファミリーセダンというより、どこかスポーツカー的というか、フロントガラスが寝ていることもあって、ちょっぴりやる気にさせるポジションです。それが“プリウス的”かどうかは別として、どこかに無理がかかるような印象はありません。
目の前に広がるメーター周辺のデザインはトヨタのBEV(バッテリーEV)の bZ4Xとの共通性をもったデザイン。速度などを表示するモニターパネルの先に道路が見えるため、視線移動も少なく済みます。さらにメーター両脇のラインの延長上に道路の両端が重なる様にデザインされていて、視覚的な疲労は少なくなります。ドライビングポジションにしろ、こうした視覚面での見やすさなど、やはり「走りでも楽しんでほしい」という気持ちが表れているのかもしれません。
一方でダッシュボードセンターにあるオーディオやナビゲーションなどを表示する大型モニターとモニターパネルは必然的に離れてしまい、視線の移動距離は大きくなってしまいました。この辺は4代目モデルまでかたくなに採用してきたセンターメーターの方が、整合性がとれるように感じます。個人的には近未来型センターメーターの提案を期待していただけに、ちょっぴり残念という感じです。