愛着のある自宅を子供に残すうえで、リフォームやリノベーションをするのも一つの手だ。長く住めるようになり、節税効果を期待できるからだ。しかし、そこには落とし穴もある。子への相続を見据えて、昨年郊外の一軒家をフルリフォームした70代男性が嘆く。
「不動産業者から『相続税対策になる』と勧められ大規模なリフォームをしたが、子供に『なぜ住みたくもない家に大金をかけたのか』と叱られました。無駄な出費に終わりそうです」
不動産鑑定士で税理士の植崎紳矢氏が指摘する。
「リフォームは上手に活用すると相続税対策になりますが、反対に不動産の価値を上げてしまって全体的に見たら税制面で損をするケースもある。業者に勧められるがままにリフォームするのは注意が必要です」
自宅のリフォームで失敗しないポイントはどこなのか。2013年の税制改正により、建物の相続税評価にはリフォーム前の建物の固定資産税評価額にリフォームにかかった費用を加算するルールが制定された。それにより、リフォームの節税効果が限定的になってしまったのだ。
「たとえば、固定資産税評価額100万円の建物に2000万円かけてリフォームした場合、その費用の最大7割を相続税評価に加算します。リフォーム前の評価額100万円を足した1500万円が新しい課税評価額になる。資産2000万円を1400万円に圧縮したことで相続税が減ることになります(図参照)。土地の値段が安い地方なら、相続税をゼロに近づけられる可能性もある。
ただし、増築や新築に近いような大規模な改修では家の資産価値が上がり、結果的に固定資産税が増えるリスクがあります。その場合には、リフォームで相続税負担を抑えられても、毎年の固定資産税が大きくなる恐れがあります」(以下、「」内は植崎氏)