「宗教2世」の問題が昨年から注目を集めている。中でも旧統一教会(世界平和統一家庭連合)を信仰する両親を持つ「宗教2世」の小川さゆりさん(仮名)の記者会見は大きな話題となった。小川さんがメディアを通じて発信している壮絶な体験を、旧統一教会の元信者はどのように捉えているのか。元統一教会信者で、詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリストの多田文明氏が、自身の体験も交えながらつづる。
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「私が正しいと思って下さるなら、どうかこの団体を解散させてください」――。小川さゆりさんが涙ながらに、日本外国特派員協会で語った言葉は、今も耳に残っています。あの時、旧統一教会は、一人で立ち向かおうとする彼女に対して、教団側の弁護士、そして両親の署名入りのファックスで会見中止を迫るという行動に出ました。
今月、彼女の著書『小川さゆり、宗教2世』が上梓されるなかで、彼女がどんなに辛い経験をしながら、旧統一教会を脱会するまでに至ったかがよくわかり、教団が組織的な形で刃を向けてきたことに対して、本当に許せない思いがより強くなりました。
こうした攻撃的言動をされるのは、彼女だけではありません。悩み苦しんだ果てに教団を離れた宗教2世たちや、長年、教団のために、時に命をかけて一生懸命に歩んできた元信者に対しても、脱会者を悪魔とみたようなひどい言葉を浴びせかけてきます。
まさにあの記者会見でも、それが見えました。
教団は、小川さんの会見中止を求めて、「『解離性同一性障害』などの深刻な精神疾患を患っています」などというファックスを、日本外国特派員協会に送ってきました。小川さんの両親は今も教団側にいますが、そもそも親が自分の子供に対して、このようなことを公の場で言うこと自体が本来、あってはならないのではないでしょうか。
同書には〈私は母が大好きでした〉〈私は父を尊敬していたので、父の喜んでいる顔を見ることが何より嬉しかった〉とあり、彼女は子供時代に教会の活動を頑張っています。その彼女の心を踏みにじるような、ひどい言葉を持って、家族の絆の断絶をさせようとしてきたことは許されることではありません。
悲しいことですが、これが旧統一教会の真の姿です。それを多くの人が目のあたりにしました。