少子高齢化や都市への一極集中といった社会背景に加え、供養に対する価値観の変化もあって、「墓じまい」をする人が増えている。厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、2021年、お墓を整理する「改葬」は11万8975件行われている。2001年の6万4755件と比べると、20年で2倍近くになっているのだ。
当然、どう進めるべきか悩んだりすることもあれば、なかにはトラブルになってしまうこともあるだろう。関係者が納得できる墓じまいをどう進めるべきか、お墓に関する相談等を行う「日本仏事ネット」代表で、1級お墓ディレクタ―の寺田良平さんに、話を聞いた。寺田さんのもとに実際に寄せられた相談事例をもとに、墓じまいのトラブルを避けるためのポイントを紹介していこう。
【ケース1】親族との思いのすれ違い
《相談》
両親も入る先祖代々の墓は、東京に住む長兄が継ぎました。その兄が亡くなり、義理の姉が「亡き夫にいつも近くにいてほしい」と、故郷の墓は墓じまいをして、今住んでいる家の近くに新たにお墓をつくると言うのです。私は嫁いでいて、お墓とは直接関係がなく反対もできません。でも、父と母が遠くに行ってしまう、お参りする場所がなくなってしまうのが、とても寂しいです。
「墓じまいの親族トラブルというと、勝手に墓じまいをしたとか、費用負担でもめた、といった話が取り沙汰されがちですが、このように、それぞれのお墓を大切に思う気持ちゆえに悩んでしまうことも少なくありません。こうした問題を防ぐには、生前からお墓について家族間で話し合いをし、みんなが納得できるかたちにすることが大切です」(寺田さん・以下同)