住宅ローンの変動金利は、固定金利に比べて金利が抑えられている分、金利上昇リスクがある。ただ、月々の支払い額を低くした分を資産運用に充てることによって、金利上昇リスクをカバーすることができるという。住宅ローンアナリストの塩澤崇氏が、シミュレーションしながら解説する。
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日銀の金融緩和策の修正が一部で予測されていますが、住宅ローンの変動金利は2023年に入っても過去最低水準にあります。背景には、変動金利が連動する短期金利が低く推移していることや、銀行間の競争激化などがあげられます。住宅ローンを借りる人にとっては好条件で借りられる状況にあることは間違いないでしょう。
住宅ローンには固定金利と変動金利がありますが、私は現状では、変動金利で借りたほうが有利だと考えています。将来にわたって返済額が確定する固定金利とは異なり、変動金利では金利上昇局面を迎えた場合に返済額が増加するリスクはありますが、前回の記事で説明したように、日銀の金融緩和策は当面続き、変動金利が現在の固定金利を上回るようなことは考えにくいからです。
変動金利を選べば固定金利と比べて月々の返済額が抑えられ、そのぶん現金が手元に多く残ります。今回は、この手元資金を「資産運用」に活用していく戦略で、変動金利の実質的な負担をさらに下げたり、金利上昇リスクをカバーする考え方を解説します。
金利の“差額分”で35年間積立投資をしてみたら
資産運用の効果を実感してもらうために、ここで具体的なシミュレーションをしてみましょう。前提として、次のような条件で考えていきます。変動金利・固定金利は2023年における平均的な水準を用いました。
【借り入れのシミュレーション】
・借入金額:3000万円
・返済期間:35年
・変動金利:0.5%
・固定金利:1.8%
変動金利で借りたときの毎月返済額は7万7876円、固定金利で借りたときの毎月返済額は9万6327円となり、その差は1万8452円です。当然、金利が安い変動金利のほうが返済額は少なくなります。