2023年4月の改正道路交通法施行により、全ての自転車利用者のヘルメット着用が「努力義務」となってから7か月が過ぎた。自転車による死亡事故のうち、約7割が頭部に致命傷を負っているとのデータもあることから、年齢に関係なく「命を守る」ための措置と言える。しかし、現状はほとんどの人が着用していない現実があるようだ。法施行から3か月以上が過ぎた7月下旬に東京都が実施したインターネットアンケート調査によると、「ヘルメット着用の努力義務化」を認知しているのは95%以上いたが、実際に着用している人は1割程度だった(回答者数485人)。
毎日のように通勤や買い物なので自転車を利用する人は、現在、ヘルメット着用についてどんな考えを持ち、行動しているのか。実際に自転車用ヘルメットを着用するようになった60代女性の思いを、フリーライターの吉田みく氏が聞いた。
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自転車利用時のヘルメット着用が「努力義務」となってから数か月が経つ。筆者の住む地域でも、ヘルメットを被り自転車に乗る人をちらほらは見かけるが、全体としては未着用の人が多く、まだ着用が定着しているとはいえない印象を受ける。
60代の夫と二人暮らしという、埼玉県在住の専業主婦・マサヨさん(仮名、65歳)は、定期的に通うフィットネスジムと自宅の往復にも自転車を利用している。ある時、フィットネスジムの同年代の仲間たちと自転車用ヘルメットをめぐる話題で盛り上がったという。
「私の通うフィットネスジムの駐車場は有料ということもあり、多くの利用者が自転車で通っています。ヘルメット着用が努力義務となった時、特に盛り上がったのがヘルメットのデザインについての話題でした。自転車用ヘルメットといえばプラスチック製で、競技用などでも見かけるスポーティーなデザインのイメージがありましたが、最近はオシャレなものが増えているんです」(マサヨさん、以下同)
筆者は知らなかったのだが、マサヨさんの話によると、外見は帽子のようなデザインでも、内側にヘルメットとしての機能がついているものが最近は売られているそうだ。安全性だけでなくオシャレさも兼ね備えているということで、フィットネスジム仲間の間では話題になっているという。
さっそく「帽子型のヘルメット」を調べてみたところ、外側が布製でぐるりとつばの付いたハット型など、様々なデザインのものを見つけることができた。価格はピンキリのようだが、おおむね3000円前後のものが多かった印象だ。着用を決めたマサヨさんが選んだのも、同様の帽子型ヘルメットだった。