「道路族」といえば、かつては道路建設の利権にかかわる政治家を指す言葉だったが、令和のSNS界隈では異なる意味を持つ。住宅街の袋小路や交通量の少ない路上を遊びや球技の練習などで利用する人を指すスラングとして、TwitterなどのSNSを中心に広く使われている。これは別に遊びに限った話ではなく、たとえ自宅の敷地内で行うとしても、近隣が迷惑がる行為となれば、“駐車場族”“庭族”と呼ばれることもあるようだ。なかには近隣住民から苦言を呈されても、そうした行為をやめない人たちもいるという。フリーライターの吉田みく氏が、当事者たちに話を聞いて、その実態をリポートする。
* * *
自宅前やその周辺の公道や私道をプライベート使用する“道路族”が批判されるのは、器物損壊等の危険性があること、騒音の影響で周辺住民の生活に支障をきたす恐れがあることなどが理由のようだ。ネット上でも議論されるなど多くの人が関心を持つ話題である。
公道上で遊んだり騒いだりするのは、わかりやすい“道路族”だが、そこまでいかなくとも「公道を私物化するな」と批判を受けることもある。今回は、そうした批判を受けながらも「やめるにやめられない」と語る当事者たちに、その言い分を聞いた。
「15年以上自宅前で洗車しています」
千葉県在住の会社員・マサルさん(仮名、47歳)は、自宅の前で洗車していたことを近所の人から指摘されたことにモヤモヤしていることを打ち明けてくれた。
「迷惑にならないように洗車をしていたつもりだったのですが、ご年配のご近所さんから『洗車していると車が通れない』『公道を私物化しないでほしい』『洗剤を排水溝に流すな』と言われてしまいました……。私はどこで洗車をしたらいいのでしょうか」(マサルさん)
マサルさんの洗車頻度は週に1度。自宅前の道はあまり広くないため、車が駐車しているとすれ違うことができないそうだ。洗車時間は30分程度を心がけ、車が来たときにはすぐに道を空けるなど、周囲への配慮には人一倍気を遣っているつもりだという。マサルさんとしてはできる限りのことをしていたと思っていただけに、近所の人たちからの指摘はショックだったそうだ。