親が亡くなった後の実家をどうするか、そのまま放っておくと近い将来、「負動産」となり、大きな負担となりかねない。だからこそ、家族で「実家じまい」の話し合いを進めなくてはならない。
実家じまいの最大の難関のひとつが「遺品整理」だ。親が長年暮らした家にはモノが溢れていることが多い。ほとんどが不要品のはずだが、親が亡くなった後の片付けの際に、子に心理的な負担が生じやすい。千葉県在住の60代男性が語る。
「うちの母親はとにかく物持ちがよかった。母が亡くなって実家の片付けに行くと、自分の子供の頃の写真や昔からずっと使っていた家電など、思い出の品がたくさん出てきました。思わず手が止まってしまい、全然片付けが進まなかった」
こうした悩みに直面する人は多いと、NPO法人空家・空地管理センター代表理事の上田真一氏が指摘する。
「思い出深い品が目に留まり、処分に時間がかかってしまうのは自然なことですが、ずるずると整理を終わらせられないでいると、実家じまいは進まない。時間がかかるほどに、家の維持費などの費用もかさんでいくことになります」
子供たちが気がつかないうちに、親が家にモノを溜め込んでいることも珍しくない。不用品回収業者イーブイ代表の二見文直氏が解説する。
「高齢夫婦の二人暮らしや、どちらかが亡くなっての一人暮らしの場合、子供が3~4年、実家に顔を見せないでいると、その間にゴミ屋敷になっていることは少なくありません。今年は、“コロナ禍が明けて久しぶりに帰省したら、実家が散らかり放題だった”という話が多い」
実家がそうした状況にあることに、親が亡くなって初めて気がつくこともある。二見氏が依頼を受けた50代女性のケースでは、しばらく実家に寄らないうちに親が亡くなり、相続する実家の片付けに向かうと、ゴミ屋敷になっていたという。
「やや極端なケースですが、この女性の実家には2トントラック12往復分の不要品が溜まっていました。その回収だけで80万円もの費用が発生したのです」