戦乱の世を勇ましく生きた武将や、時代の転換点で日本を導いた実業家など知性と猛々しさにあふれた男性を描いた作品が続いたNHK大河ドラマ。今年の『光る君へ』は、この国初のベストセラー女流作家・紫式部にスポットがあたる。実に波瀾万丈な彼女の人生をひもとくと、現代を強く生きるためのヒントが見えてきた。【全3回の第1回】
「これまで触れてこなかった書道や琵琶、乗馬や舞……。人生の中でいまがいちばん習い事をしています。しかも月謝なしで(笑い)」(吉高)
「ぼくもいま、蹴鞠や筆を習っていて。蹴鞠って、ポロみたいなスポーツなんですね。筆は道長さんの直筆の字を見させてもらったのがとても印象深かった。指先から伝わってくる人間性を感じました」(柄本)
1月7日に放送開始のNHK大河ドラマ『光る君へ』。昨年12月に行われた初回試写会後の記者会見で、紫式部を演じる吉高由里子(35才)と、その“パトロン”である藤原道長を演じる柄本佑(37才)は冒頭のように語った。
大河の中でも2番目に古い時代を描く同作を手がける脚本家の大石静さんは、「平安時代はとても知的で、国風文化も栄えたいい時代。現代のことが頭に入ってこないくらい“平安時代の人”になってこの仕事に懸けてきました」と意気込む。
平安時代の宮廷が舞台の作品は大河ドラマ史上初とあって注目されている『光る君へ』だが、時代設定以上にドラマファンの期待を集めているのは、「紫式部」というベールに包まれた伝説の女性が令和の時代によみがえることだ。
日本最古のベストセラー女流作家は、その作品のみならず存在そのものがこれまで多くの人々の心をとらえ、『光る君へ』以前にもさまざまな女優たちがこぞって紫式部を演じてきた。時代劇研究家のペリー荻野さんが語る。
「これまで映画やドラマで吉永小百合さん(78才)や中谷美紀さん(47才)といった名だたる女優が演じてきました。私が印象深かったのは1991年のドラマ『源氏物語 上の巻・下の巻』(TBS系)に出演した三田佳子さん(82才)です」