首都圏・関西圏の中学受験の大手塾であるSAPIX。特に難関校を狙う層に大きな支持を集めている。最近の中学受験のトレンドが変わり、SAPIXの入室テストを受ける層にも変化が見られるという。著書『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする「SAPIXで苦戦する親たち」の第4回。【全4回。第1回から読む】
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中学受験でトップの実績を誇る「SAPIX」の生徒の親の多くは「宿題をやらせるのが大変だ」と口を揃える。SAPIXは家庭での学習が中心で、親が横について教える必要が出てくるからだ。かつては「子どもの受験が自己実現」という高学歴の専業主婦が、そこにやり甲斐を見出していたというが、現在、中学受験生の家庭の大半は共働きなのでそうもいかない。子どもの受験に時間や手間をかけられない母親も増えてきた。そうなると家庭での負担が重くのしかかり、不満の声も漏れてくる。ただ、不満のタネはそれ以外の点にも潜んでいるようだ。
シリーズ最終回では、中学受験生の質の変化とSAPIXなどの塾側の苦悩について言及しよう。
SNSを見ていると「SAPIXの入室テストは難しい。SAPIXの入室テストへの対策のために家庭教師をつける家庭もある」という都市伝説のような話も見受けられる。
SAPIXの入室テストの実際の難易度はそうは高くない。実際、拙著『中学受験 やってはいけない塾選び』では、SAPIXの広野雅明教育事業本部長が入室テストの合格率をこう話している。
「8割9割受かります」
日本語の基本的な読み書きができれば合格できるレベルなのである。公立小学校の授業についていっている生徒ならば、ほぼ合格するようだ。
ところがなぜ「SAPIXの入室テストは難しい」という評判が広がるのか。それは、不合格者が増えているからだ。
広野氏のコメントで分かるようにSAPIXの入室テストは8割から9割は合格するように作られている。ところが昨今では7割しか受からないこともあるという。「日本語の基本的な読み書きが身についてない生徒たちがSAPIXに入ろうとする」から、「SAPIXの入室試験は難しい」という評判が広がるのではないか。