地球規模で大きなうねりとなっているSDGs(持続可能な開発目標)だ。しかしその行動は、果たして本当に世界のためになっているのだろうか。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部准教授で経済思想家の斎藤幸平さんは、「個々の取り組みを全否定するわけではありません。とはいえ意味があるかと問われれば、はっきりとないと言えます」と一蹴する。「個人レベルで、マイバッグを持ち、プラスチック製のストローを使わないようにし、マイボトルを持って、フードロスをなくそうとブロッコリーを芯まで食べても地球規模の問題には対処できません」というのだ。SDGsの問題点に迫る。【全3回の第2回。第1回から読む】
斎藤さんの懸念は、SDGsの商業化にもおよぶ。
「企業側は地球環境に不安を感じる消費者の心理を把握しています。だからこそ、“リサイクルやプラスチック製品の不使用”“フェアトレード”など環境や人権を前面に押し出し、途上国の現実を先回りしてカバーする。本来であれば、労働者を安く使い、環境を破壊するような大量生産・大量消費型のビジネスモデルから企業が離れるべきなのに、利益追求の資本主義システムにSDGsが組み込まれてしまっている。企業も“やったつもり”で金儲けを続け、SDGsが骨抜きになるのです」(斎藤さん・以下同)
SDGsの“本質”が行き着く先は、行きすぎた資本主義のメカニズムだ。
「資本主義の目的は、利潤を追求して資本を増やすこと。モノを広く安く売って儲けようとする社会では経済成長が優先され、自然環境や人間の幸福は後回しです。富は一部の富裕層に集中し、社会保障は削られ、多くの労働者は使い捨てられていく。
日本でも非正規労働者や過労死が問題になっていますが、際限なく利益を追求する資本主義社会では、いくら働いても生活は豊かにならずに疲弊するのです」