2024年の中学受験業界で、大きな注目を集めているトピックがある。首都圏の最難関校である筑波大学附属駒場(筑駒)で繰り上げ合格が例年に比べて多かったと見られていることだ。なぜこうした事態になっているのか。ノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする。【全3回の第2回。第1回から読む】
* * *
関東の中学受験の最高峰である、筑波大学附属駒場。生徒の約6割から7割が東大に現役で合格をするという圧倒的な合格実績の最難関校だ。国立附属校らしく、学校は生徒に「勉強をしろ」とか「東大を受験しろ」とはいわない。大学受験対策も学校ではしない。どちらかというと教養を重んじる、名門校らしい教育で知られている。
その筑駒では毎年、繰り上げ合格が出ても若干名だ。ブランド力があると同時に国立附属なので学費が安い。そのため、合格したら進学するのが当然なのだ。
ところがその筑駒で、今年は多くの繰り上げ合格があったようだ。中学受験塾SAPIXの筑駒合格実績を見ると、2月5日の合格発表直後は79名であった合格者数が、後に98名に増えている。SAPIXだけでも19名が繰り上げ合格しているわけだ。
つまり、それだけ筑駒の合格辞退者がいた、ということになるが、なぜなのだろうか。SNSでも多くの推測が語られているが、的を射た分析はあまり見られなかった。その謎を解く鍵が、「通学区域拡大」の影響だ。筑駒には「この地域に住んでいる受験生のみが通学できる」という地域指定があり、2024年度からその地域が拡大されたのだ。