その人の能力、性格、体質などは、親から受け継いだ遺伝情報によって決まるものもあれば、育った環境や生活習慣などの影響によるものもある。その“遺伝の影響”を調べるために研究対象となるのが“双子”だという──。【遺伝の研究・全3回の第2回。第1回から読む】
「計算」や「認知」だけでなく「やる気」も遺伝率が上回る
そもそも遺伝の影響はどうやって調べるのか。代表的な研究法である「双生児研究」は、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児と、半分程度の遺伝情報を共有する二卵性双生児の性格や体質、学力、嗜好などを比較する。この研究の第一人者である慶應義塾大学名誉教授の安藤寿康さんが語る。
「同じ環境で育った一卵性と二卵性を比べて、一卵性の方がより似ているものについては遺伝の影響が大きいと判断し、一卵性も二卵性もどちらも似ていれば遺伝ではなく同じ家庭で一緒に育った環境(共有環境)がかかわっていると判断します。逆にどちらも似ていなければ遺伝でも共有環境でもなく、それぞれの友人関係など独自の環境(非共有環境)がかかわっていると推察できます」
これまで行われた膨大な双生児研究の成果をまとめて掲載したので確認してほしい。この結果を見ると、「計算」や「認知」といった知能だけではなく、「やる気」など性格とされるものも、影響を与える割合において遺伝率が環境要因を上回った。
一方、「仕事と雇用」、「社会的態度」など周囲の環境や、社会と当人とのかかわり合いが大きく影響しそうな分野では環境要因が7割とさすがに大きいが、遺伝の影響も3割と少なからずあるという。私たちが生きる上での心理や行動には大小はあれど、遺伝がかかわらないものはほぼないといえるだろう。