保険会社各社の主力商品となっている「がん保険」。「加入するかどうかの分かれ目」はどこにあるのか。ファイナンシャルプランナー(FP)が、年齢や経済状況、家族構成など7つのモデルパターンで、がん保険の加入が「得か、損か」を診断して、その結果をまとめた。
監修に当たったのは、大手生保会社での勤務経験があり、保険に関する著書も多いFPの横川由理氏。保険商品の実情を熟知し、「忖度はしません」と公言してきた横川氏は、“保険会社から最も恐れられるFP”でもある。
加入が「損」となる典型的なパターン
まずは加入が「損」となるパターンを見ていく。典型的なのが会社員Aさん(58)のケースだ。
Aさんには妻子がいて、年収は600万円。夫婦共働きで、会社員の子と同居。預貯金は700万円、ローン残額は住宅と自動車を合わせて1200万円となっている。
「十分な預貯金があり、数年後には退職金が入るのでローン返済もある程度目処がついています。
妻も会社員なので、仮にAさんががんで働けなくなっても家計が逼迫する可能性は低い。子供は独立しているので養育費や教育費も発生しません。こうしたケースではがん保険に加入するメリットは低いでしょう」(横川氏。以下「 」内同じ)
厚労省の統計によれば、がん治療に要する1件あたりの平均医療費は3割負担でおよそ24万円(入院の場合)。所得にもよるが、高額療養費制度を使えばひと月の医療費は8万円程度に抑えられることが多い。
病気などで就労不能になった場合でも、会社員であれば「傷病手当金」が通算で最長1年6か月間支払われるので、治療費で家計がいきなり破綻するリスクも抑えられる。