政府肝いりの「新NISA(少額投資非課税制度)」がスタートし、まもなく半年。世界的な株高を背景に投資意欲も旺盛だが、新NISAで投資デビューした人のなかには「こんなはずではなかった」と落胆の声を漏らす人も……。
1月にスタートした「新NISA」は従来の制度と同様、投資で得た配当金や売却益にかかる約20%の税金が非課税になることが最大のメリットだ。加えて新制度では、年間投資上限額の大幅拡大(「つみたて投資枠」は年120万円、「成長投資枠」は年240万円に)、また非課税期間が無期限となり、より長期の資産形成がしやすくなった。
そうしたメリットを活かそうと、NISA口座の開設も増え続けている。日本証券業協会によると、主要証券会社10社の今年1~3月の新規口座開設数は約170万件に達し、前年同期の3.2倍に急増。ブームに乗り、新NISAで投資家デビューを果たしたものの、さっそくしくじってしまった人たちがいるようだ。
「“損切り民”と笑われた」「売却したら値上がりし始めた」
知人の勧めで新NISAを始めたというA氏(59)が落胆する。
「3月初旬に新NISAの成長投資枠で、ある製紙会社の株(株価2300円)を200株、約46万円分購入しました。株に詳しい知人の意見やネットで情報収集し、長期的に有望と判断したからです。ところが、それから10日足らずで株価が下がり始めた。4月に入って株価が1300円まで下がったところで怖くなり、すべて売って損切りしました。結果的に1か月足らずで20万円も損失を出すことになりました。投資を勧められた知人からは、『お前みたいなやつを“損切り民”と言うんだ』と笑われました」
今年3月、初の4万円台をつけた日経平均株価だが、4月には米国の利下げ期待の後退などに伴って一時3万7000円割れまで急落。A氏のような投資ビギナーが日々、下がり続ける株価に戦々恐々とし、早々に「損切り」をしてしまったケースは少なくないという。