現在、大学入試では推薦入試での入学者が多くなっており、その入試方法も多様化している。そうした中で、近年、受験生の人気が高まっている東洋大学が新たに導入する「学力テスト型の推薦入試」が大きな話題を呼んでいる。その背景には何があるのか。『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする。【全3回の第2回。第1回から読む】
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少子化の影響もあり、大学入学者の過半数が推薦入試での入学を決めている。2024年の国公立大学の入学者の23%、私立大学では6割ほどが推薦で入学を決めていく。この流れの中で、推薦入試の入学者に対しては「学力テストを受けていないからずるい」「学力がなくて入学後どうするのか」といった批判や反発も見受けられる。その中で、東洋大学が「学力テストのみで合否を決める推薦入試」を導入すると発表し、関東の大学受験業界に大きなニュースになっている。
そもそも推薦入試は総合的な能力を測るもので、評定偏差値、ボランティアや部活などの活動実績、海外経験、小論文、面接、グループディスカッションなどで合否を決める。つまり、学力だけを重視しない試験なのだ。国の方針は「学力だけではなく総合的な能力を測るために推薦入試を推奨したい」であるのに、なぜ、今、「MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)に届く勢い」と評されるほど人気の東洋大学が学力テスト型の推薦入試を始めるのだろうか。東洋大学入試部長の加藤建二氏に、導入の意図を聞いた。
――基礎学力重視の推薦入試を始めるのはなぜなのでしょうか。
「年内に行う推薦入試の需要は高いです。それに応えたいと考えますが、従来やってきた総合型選抜は非常に“むずかしい入試”なんです。書類審査や小論文、面接といった試験ではなかなか受験生の能力を適切に判断できないからです。
特に近年は推薦入試対策が成熟してきています。事前に提出するプレゼン資料や課題、志望理由書に『大人の手が入っているな』と感じられるものが目立つようになってきているのです。まるでプロが作成したような完成度が高い書類が提出されるんですよ。面接もそうです。事前に面接の練習をしてくるから、その学生の『素』のキャラクターが見えにくくなってしまっている。受験生本人の能力や資質を測るのが非常にむずかしいというのが現状なのです」(加藤氏、以下同)