華為技術(ファーウェイ)は9月20日、世界初となる三つ折りタイプのスマホ“HUAWEI Mate XT非凡大師”を発売した。9月7日から事前予約が開始されたが、最終予約者数は685万人を超えた。強い需要に生産が追い付かず、しばらくの間、極端な品薄状態が続きそうだ。
折りたたみ式スマホは、中国勢では同社に加え、OPPO、VIVO、小米などが生産しているが、サムスンやモトローラー、グーグルなど海外勢が先行して開発した製品だ。ただ、縦折り、横折りの別はあるが、これまでは各社いずれも二つ折りであった。今回は、華為技術が初めて三つ折りタイプを量産したということで、「勢力分布が変わるのではないか」、「比較的新しいコンセプトの製品としては伸び悩み気味の折りたたみ式だが、市場が一気に拡大に転じるのではないか」といった期待が一部の業界関係者の間で広がっている。
折りたたんでしまえば6.4インチのスマホだが、1回開けば7.9インチ、2回開けば10.2インチのタブレットとして機能する。10.2インチあれば、折りたたみ式のキーボード、小型のマウスとともに出張先に持って行けば、報告書などはストレスなく書けるだろう。調べ物をしても、YouTubeを見たりゲームをしたりしても、6.4インチのスマホよりは使いやすい。加えて、分割機能が多彩で、一般のタブレットと比べても優位性がある。
気になるのは開いた状態で落としてしまった場合の耐久性だが、さっそく中国本土の業界関係者たちが落下実験をしている。ネット上では、全開状態で、2メートルの高さから木材、大理石の上に落としても大丈夫であったといった結果を示す資料なども散見される。
画像の質、厚さ(全開時で3.6mm)、ディスプレイの耐久性、電池の持ち時間、大画面の特徴を最大限に生かしたアプリの有無など気になる部分もあるが、そうした製品評価に関する情報は今後、市場関係者、ネットユーザーたちを通して順次得られるようになるだろう。
もっとも、ネックとなるのは値段の高さだ。それゆえ、折りたたみスマホ市場の急拡大は起こらないのではなかろうか。華為商城ホームページによれば、256GBで19999元(39万9980円、1元=20円で計算)、512GBで21999元(43万9980円)、1TBで23999元(47万9980円)となっている。中国の予約販売は、いつでもキャンセルが可能であり、転売目的による予約も多い。贈答品も含めたビジネス用途や、一部の富裕層による根強い需要があったとしても、予約台数である600万台を超える数量がそのまますべて売れることはなさそうだ。
そもそも生産が追い付かない。本土系証券会社(天風国際証券)のアナリストは2024年の出荷台数見通しを50万台上方修正した上で100万台としている(中国基金報、9月20日付)。同社としても、すぐさまこの製品が収益の柱になるとは考えていないだろう。価格帯別、タイプ別に、細かくカテゴライズされた品揃えの中で、今回発売の“XT非凡大師”は高級スマホであるMate系列の戦略商品の一つといった位置付けだろう。