森永卓郎「読んではいけない」

「1ドル=70円台、日経平均は3000円台まで大暴落もあり得る」森永卓郎氏が警鐘を鳴らすトランプ氏再選後の最悪シナリオ

支持率が拮抗するトランプ氏(左)とハリス氏(時事通信フォト)

支持率が拮抗するトランプ氏(左)とハリス氏(時事通信フォト)

 誰もが目を背ける不都合な真実に堂々と立ち向かう――闘う経済アナリスト・森永卓郎氏の新連載「読んではいけない」がスタート。記念すべき第1回のテーマは、米大統領選。森永卓郎氏を数十年来つきまとう“不吉なジンクス”によると、トランプ氏が再選するという……。

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 間もなく投開票を迎える米大統領選(現地時間11月5日)で、民主党のカマラ・ハリス氏と共和党のドナルド・トランプ氏のどちらが勝つか。

 米国での世論調査結果では、ハリス氏がわずかにリードしている。詳しくは後述するが、日本経済および世界経済にとってトランプ氏の勝利は悪夢の始まりとなるので、個人的にはハリス氏の勝利を望んでいる。

 しかし、私はある不吉なジンクスにずっとつきまとわれている。重要な選挙が接戦となっている場合、勝って欲しくない、嫌いな方の候補がたいてい勝ってしまうのだ。

 先月の自民党総裁選でも、私は日本経済にとっては積極財政派の高市早苗氏が望ましいと考え、勝利を願っていた。だが、決選投票で石破茂氏に逆転されてしまい、私の個人的ジンクス通りの結果となってしまった。

 そのため、来る米大統領選でも、数十年にわたる私のジンクスから言うと、トランプ氏の勝利という結果になる。もちろん、それが現実になって欲しくないのだが。

 ハリス氏が勝利して大統領となった場合、基本的にはバイデン政権の継承となるので日本経済への影響はニュートラルだろう。為替についてバイデン政権は円安ドル高を放置したので、ハリス大統領が誕生しても円安基調は続くと思われる。株はじわじわ値を下げると予想するが、日本経済に大きな変化はもたらさないだろう。

 ひとつ懸念されるのは、米国がウクライナ支援のために拠出した610億ドル(約9兆円)の融資だ。一部報道によると、バイデン大統領と岸田文雄・前首相の間で、この融資を最終的に日本が肩代わりする約束を交わした可能性があるという。

 後日、小林麻紀・外務報道官は肩代わり論を否定したが、日米外交は水面下でどんな密約があるか分からない。仮にこれが事実なら、ハリス政権のもと、この約束を盾に日本政府は最悪9兆円を肩代わりさせられることになる。そうなれば大増税が国民を襲うことになりかねない。

 一方、トランプ氏が再選された場合は、トランプ氏がロシアとウクライナの戦争は「直ちに終結させる」と言っているので、彼の言葉通りになる公算は高い。だが、トランプ再選でプラスの側面はそれぐらいで、あとは悪いことずくめだ。

 トランプ氏は徹底的な米国ファースト路線で、自国だけが栄えればいいという思想である。近隣窮乏化政策を行なうことは容易に想像がつく。

 貿易相手国に負担を押し付け、その犠牲のうえに自国の経済回復を図ろうとする米国ファーストの政策に邁進するだろう。

中国からの輸入品の関税を60%に引き上げ公言

 まず為替について、トランプ氏は製造業復活のためのドル安志向を標榜しており、大幅なドル安誘導政策を行なうはずだ。

 当然、その一方で円高が劇的に進む。IMFの世界経済見通しによると、現在の米ドル・円の購買力平価は1ドル=91円なので、短期的にはそれを超えて70円台まで円高が進む可能性がある。

 結果、日本の輸出製造業が大幅な業績不振に陥り、日本経済は円高不況に襲われて大幅なマイナス成長となるだろう。株価も暴落し、日経平均は1万円を割り、最終的に3000円台まで下がる可能性もある。歴史を見ると、バブル崩壊時に株価は8割以上値下がりするからだ。

 トランプ氏の再選で窮地に陥るのは日本経済だけではない。彼は中国からの輸入品の関税を現在の10%程度から60%に一気に引き上げると公言している。それが現実になれば、すでに景気悪化にあえぐ中国経済はさらに痛手を負うことになる。

 中国以外のすべての国からの輸入品に対しても、10%の関税をかけると言っているので、世界経済は混乱を極めるだろう。

 高関税で国内産業を保護するトランプ氏の政策で、確かに米国の製造業は復調し、短期的に米国経済は繁栄することになるはずだ。ただし、好景気が続くのはせいぜい2~3年に限られる。その後に待つのは地獄である。

 米国ファーストの近隣窮乏化政策によって“いじめられ続ける”中国をはじめ、多くの国々の不満が鬱積し、暴発する恐れがあるのだ。

 それで何が起こるか。振り返れば、自国の繁栄だけを目指してわがまま放題をやる大国が現われた時、最終的に世界戦争に結び付くというのが歴史の教訓である。

 米中関係がこれほど緊迫するなか、仮にトランプ新大統領が誕生し、自国優先主義に舵を切ったら……。それは「第三次世界大戦」という地獄の底に向かって思い切りアクセルを踏むことに他ならない。

 トランプ氏の敗戦を願うばかりだが、私につきまとうジンクスが、不吉な未来の到来を予感させてならない。

※週刊ポスト2024年11月8・15日号

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