米国の対中強硬策が中国経済に与える影響は大きい。米国の大統領は外交政策の策定、実施において総合的な責任を持つだけに、中国人民の米国大統領選挙への関心は高い。共産党は自国の政治には厳格な報道規制を敷いているが、海外政治に関する情報発信については、基本的に管理はしない。そのため、11月5日の投開票日を前に、多方面から拾い上げてきた大量の情報について、民間メディアをはじめ、経済関連情報を扱うインフルエンサーなどがSNS上で盛んに紹介している。そうした中には、米国民主主義の本質に触れるようなものも散見される。米大統領選挙に関して、中国で注目されているトピックをいくつか紹介してみよう。
富豪ファミリーによる多額献金のリスク
米国では、富豪ファミリーによる多額の献金が問題となっている。10月29日、公正な課税を求めて活動する無党派政治擁護団体のAFFT(Americans for Fair Taxation)が公表した報告書によれば、今年の大統領選挙期間中、全米で150の富豪ファミリーが両候補者に対して総額19億ドルもの献金を行っており、最終的には20億ドルを超えるようだ。2020年は600余りの富豪ファミリーが総額12億ドルの献金を行ったが、今回はより少数の献金者がより多額の献金を行っている。
イーロン・マスク氏の1億3200万ドルをはじめメロン財閥のテモシー・メロン氏、ラスベガス・サンズを所有するミリアム・アデルソン氏、海運業界の大物であるリチャード・ウイライン氏など、4名の大富豪だけで合計3億9500万ドルの資金をトランプ氏に献金、一方、ビル・ゲイツ氏は非営利団体を通して約5000万ドルをハリス氏に献金したと複数のメディアが報じている。
“献金者は何らかの見返りがなければ大金を払うはずはない”という点に着目すれば、一部の金持ちのために政治が支配されてしまうリスク、大多数の一般有権者の声が政治に届かないリスクがある。
中国人留学生が期日前投票をして詐欺罪・偽証罪で逮捕
更に深刻なことが報道されている。選挙の公平性に関する問題である。
投開票日の前日、11月4日午後の時点で、全米で8000万人をす有権者が大統領選挙の期日前投票を行ったと報じられている。米国国勢調査局(USCB)によれば2022年の中間選挙時における有権登録数は1億6142万人、2020年の大統領選挙時は1億6831万人であった。過去のデータから推計すれば、少なくとも4割強の有権者が既に期日前投票を行ったとみられる。なぜこれほどまでに多いのだろうか。
10月30日以降数日にわたり、CNN、ABC、Fox Newsなどが一斉に報じた事件がある。選挙に関する詐欺罪、偽証罪の疑いで19歳の中国人留学生(ミシガン大学)が逮捕された事件である。
この学生は10月27日、ミシガン大学美術博物館に設置された投票所において、大統領選挙に関する期日前投票を行ったのだが、投票を行う前に、学生証とミシガン州アナーバーの居住証明書を使って選挙民登録を済ませていた。自分は米国公民であるとの宣言文に署名した上で、投票を行ったのである。