米大統領選でのトランプ氏の返り咲きを受けて、株高・ドル高でスタートしたトランプ相場。「米国ファースト」の政策を掲げるトランプ氏だけに、投資の世界では米国株に注目が集まるが、「注意が必要」と警鐘を鳴らすのが武者リサーチ代表の武者陵司氏だ。
米国では株から債権への投資資金のシフトも
「新NISAにより日本でも急速に投資ブームが盛り上がっていますが、その大半は世界の株式への分散投資を謳いながらも実態は米国株投資に偏重したオルカンこと、『eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)』に流れている。投資は通常ホームカントリーバイアスがあり、自国投資偏重となりますが、日本は逆に海外投資偏重という奇妙なことが起きている。これは非合理的で、リスクがあります。
現在の米国の資産価格バブル度を検証してみると、株式はバブルではないものの、割安感は完全になくなり、中期的には警戒も必要な局面に入っています。高騰が続く住宅価格も同様に、バブルと即断はできないまでも割高テリトリーに向かっているのは間違いない。黄色信号寸前の状態であり、今後金利が急騰すれば直ちにバブル化するでしょう。こうした背景から、米国では株から債券への投資資金のシフトが起きる可能性が考えられます」(武者氏・以下同)
そう話す武者氏は、米国株よりも日本株にこそチャンスがあると説明する。
「日本の資産価格はまだまだ割安水準にあります。近年、日本企業と日本経済の体質は大きく改善している。生産力は向上し、企業統治の改革も前進した。株主の期待に応えるだけの収益力をつけています。製造業に有利な円安とハイテク産業を中心とする生産拠点の国内回帰によって、日本企業はこれから数十年、回復基調が続くと思われます。それに伴い、日本株は右肩上がりの上昇が見込まれるのです。
ウォール街には『FOMO』と言う言い回しがあります。“Fear of Missing out”の略で、取り残されることに対する不安を意味する。現在の日本株式市場は、まさにそのような状態に入りつつある。日本株のばかげているほどの割安さにようやく人々は気づき、“日本株を持たざるリスク”を真剣に考えざるを得ない時期に来ています。国内外の機関投資家、企業、個人投資家などすべての投資主体の資金が日本株に流入する期待が膨らんでいるいま、オルカンより日本株のほうがはるかに魅力的です」