2023年11月にすい臓がんのステージIV診断(その後、原発不明がんと診断)され、闘病中だった経済アナリスト・森永卓郎さんが逝去した(享年67)。がんになってなお精力的に活動した森永さんは、闘病中も本誌・週刊ポストで連載を持ち、特集にもたびたび登場。死の間際でも悲嘆は微塵も見せず、堂々とモリタク流の死生観を貫いた。その言葉は、人生の終わりを考えるうえで大きな学びとなる。
前向きに倒れる
「『もうすぐ死ぬ』という最強のカードを手にしたのだから、他人にとやかく言われる筋合いはないはずだ。命が尽きるまで誰にも忖度せずフルスピードで走り続けて、運命が尽きた日に、前向きに倒れる」
1月28日、森永さんが自宅で息を引き取った。本誌前号(2025年2月7日号)の独占手記「森永卓郎 がんで分かった『お金と健康』14の真実」で綴ったこの言葉通りの生き様だった。手記では「私個人の人生観」と前置きしつつ、こう記した。
「この先、がんの転移が広がって重篤な状態になったとしても、入院はしないし、延命治療を受けるつもりもない。命があるうちは、つらいことや苦しいことはせず、自分が楽しいと思うことだけを思い切りやりたい」
闘病中、前向きな気持ちや「やり遂げるまで死ねない」という強い意志こそが自分を立ち上がらせると信じた森永さん。生きる力の源となったのは、「仕事」だった。森永さんの本誌連載『読んではいけない』の取材で最後の連絡となったのは死去の3日前、1月25日のことだった。電話越しに「ここ一年で一番体調が悪い」と明かした森永さんだが、暗さはなく、笑いながらこう言ってのけた。
「まぁ、死ぬ日まで仕事をしますから」