4月に事業が開始される「コーエーテクモコーポレートファイナンス」の新社長に襟川恵子氏が就任(時事通信フォト)
投資家たちの間で注目を集める企業人事の発表があった。『信長の野望』や『三國志』などの人気ゲームで知られる大手ゲーム会社・コーエーテクモホールディングスが経営陣の刷新を発表した(2月10日)。
旧コーエー創業者の襟川陽一社長(74)は会長に、妻の襟川恵子会長(76)は取締役名誉会長になり、鯉沼久史副社長(53)が6月に社長に昇格する。
市場が注目するのは、この人事に合わせて4月に事業が開始される新子会社「コーエーテクモコーポレートファイナンス」だ。同社は事業会社が担っていた有価証券などの運用機能を集約し、恵子氏が社長に就任する。
「コーテクHDの2024年3月期の営業外収益は357億円で、本業の儲けを示す営業利益284億円以上です。これは約1200億円もの運用資金を一手に担う恵子氏の手腕。それだけに新会社の舵取りに期待が高まっています」(大手紙経済部記者)
投資家の祖母の影響で6歳から株に親しんだという恵子氏。ゲーム開発者「シブサワ・コウ」として知られる夫と旧コーエーを興してからも「天才女性投資家」として注目された。
「本業のゲーム事業が低迷した際、会社を支えたのは恵子氏の投資でした。彼女が“孫ちゃん”と呼ぶ孫正義氏とは旧知の仲で、2021年にソフトバンクグループ初の社外取締役に就任しました」(同前)
かつて同社で役員を務めた伊藤通宏氏が語る。
「私の在籍時からゲーム開発は陽一さん、対外交渉は恵子さんが担っていた。恵子さんは判断力と先を見る目が人とは違った。ソニーがゲーム機『プレイステーション』を世に出す時、どこも“1強”だった任天堂の顔色を窺うなか、プレステへのソフト事業参入を決めたのは恵子さんでした。
創業以来、借入金ゼロ経営を続けているのも彼女の胆力の賜物。ゲーム事業から投資運用を切り離し、恵子さんがより注力する今後が楽しみです」
新会社は株式市場にどんなインパクトを残すか。
※週刊ポスト2025年3月14日号