若者たちを中心に「インスタ映え」が意識されるようになって以降、様々な場所が「映える(ばえる)」スポットとして脚光を浴びるようになった。そうした中で、昔ながらのレトロな喫茶店も、雰囲気のよい「映える」スポットとして認知され始めている。だが、当の喫茶店からすれば戸惑いを隠せない面もあるという。
東京都内の老舗喫茶店の店主(60代・女性)が語る。
「うちの店は有名なモデルがSNSで紹介したとかで、数年前から『インスタ映えする店』としてお客さんが増えました。アフタヌーンティを注文する若い女子が多いのですが、マナーの悪い人も多くて……。先日は『写真に写りこむと見栄えが悪い』と、お水とおしぼりを机から椅子の上にどけて写真を撮り始めた子たちがいました。さすがにその時は注意しましたね。
なかには写真を撮ることが目的で、頼んだメニューをほぼ食べずに残して帰る女子もいますね。他にも男性アイドルか何かの写真やキーホルダーをケーキの横に並べて一緒に写真を撮る人、テーブルに化粧品を並べ出す人もいて、正直、理解が及びません。お客さんが増えることは嬉しいですが、モヤモヤしますよね」
同じように、マナーを守らない若者客が増えたと語るのは、別の老舗喫茶店の店員(40代・男性)だ。
「先日、他のお店で買ってきたお菓子を持ち込んでいる学生カップルがいました。少し様子を見ていましたがテーブルにお菓子広げ、もぐもぐ食べているんです。見兼ねて注意をすると、『じゃあガムや飴なら良いんですか?』『持ち込み禁止って、店に書いてないですよね?』と逆ギレ。男の子だけでなく女の子にも睨まれて怖かったです。
以前はタバコを吸いたいサラリーマンや、静かに本を読むコーヒー好きくらいしか来なかったのですが、派手な学生が増えると雰囲気も変わります。周囲の常連客は苦笑していますよ。店内の写真をやたらと撮ったり、飲み物を注文せずケーキだけを頼もうとしたり、マナーを知らない子が増えた印象はありますね」
お金を払っている以上、お客であることは間違いないだろうが、マナーが悪いとお店にも、他の客にも迷惑がかかる。「インスタ映え」で人気が出ること自体は悪いことではないだろうが、それが逆にお店を苦しめている側面もあるようだ。