昨今、中高年のひきこもり問題がクローズアップされている。「ひきこもり」と聞くと、都心の戸建ての一室や、マンション、アパートでひっそりと暮らすイメージがある。都会では地域のつながりが希薄だったり、核家族が多かったりするので、相互扶助が成り立たず、地方よりもひきこもりが発生しやすいという理屈だ。
だが、そのイメージは見当外れだ。ひきこもりの現場を20年以上取材してきたジャーナリストの池上正樹さんは、「都会より地方の方がひきこもり傾向は強い」と指摘する。
内閣府は今年3月、初めて中高年(40~64才)を対象にひきこもりの実態調査「生活状況に関する調査(平成30年度)」を実施した。調査では、中高年のひきこもりが全国に61.3万人いることがわかった。2015年の若年層を対象にした調査では、ひきこもりの人数は54.1万人だったことから、今回の中高年の数字と合わせると、ひきこもり人口は全国に100万人以上いることが明らかになった。
秋田県藤里町の戸別調査によると、対象年齢(18~55才)に占めるひきこもり比率は「8.74%」という非常に高い結果が出ている。それに対し、「都市部」の東京都町田市が実施した調査では「5.5%」。調査方法も異なり単純比較はできないが、秋田県藤里町では「10人に1人」がひきこもりになるのに対し、東京都町田市でひきこもりになるのは「20人に1人」の割合なのだ。池上さんが話す。
「地方のコミュニティーが濃いところほど、周囲の目を避けようとしてひきこもりにつながりやすい。一方、都市部は少し離れると近所に誰が住んでいるかわからない匿名性があり、地方に比べて、人の目は相対的に少ない。また、都会のマンションよりも、地方の大きな戸建ての家の方がさまざまな事情を隠しやすいという側面もあります」