飲食チェーンは栄枯盛衰が激しい。とくに近年、店舗数を増やしているのが、立ち食いスタイルで低価格のステーキが味わえる『いきなり!ステーキ』だ。2013年12月に東京・銀座に1号店をオープン。6月19日現在では、全国に466店を構える。昨年6月末時点では276店だったから、このわずか1年で190店も爆発的に増やした。
ラーメンチェーンの『幸楽苑』は、経営効率が落ちるとされる「600店舗の壁」に近づいた2017年3月期(当時542店舗)に赤字に転落したが、全体の1割弱にあたる52店舗を閉店し、その一部で別フランチャイズの『いきなり!ステーキ』の経営を始めてV字回復を果たした。“奇策”が功を奏したのだ。
対照的に、戦略の転換がうまく行かなければ、縮小を余儀なくされる。
外食業界に詳しいジャーナリストで『居酒屋チェーン戦国史』などの著書がある中村芳平氏が「戦略転換の“失敗例”」と指摘するのが、居酒屋チェーン『金の蔵』や『東方見聞録』を展開する三光マーケティングフーズが実施した「全品270円均一」への転換だ。
「2008年9月のリーマン・ショックを契機に居酒屋離れが起こり、3000円以上だった客単価を2000円前後にまで引き下げるべく導入しました。『全品270円均一 金の蔵Jr』などに屋号を変え、居酒屋業界に空前の“低価格均一戦争”を仕掛けました。
しかし、低価格食材の調達には困難が伴い、2011年頃には『全品270円均一』の看板を下ろさざるを得なくなった。厨房の機械化、タッチパネル注文などの導入により、少人数化しようとしたこともうまく機能しなかった」
2008年6月末時点に54店舗を展開した『東方見聞録』は、現在3店舗に縮小(6月19日時点、29日に4店舗目をオープン予定)。『金の蔵』もピーク時(2012年6月期)の79店舗から、63店舗になっている(6月19日時点)。
※週刊ポスト2019年7月5日号