これから定年や年金受給を迎える世代の資産形成を揺るがしているのが政府の「働き方改革」だ。
大きな柱のひとつが「過労死ゼロ」をスローガンに導入された残業規制だが、こちらは手取り収入の大幅ダウンで住宅ローン破産が大きな問題になりつつある。その一方で残業規制と矛盾するのが「働き方改革」のもうひとつの柱、「副業解禁」だ。
残業カットで収入が減るから、その分は副業で社外で働いて稼げというのであれば過労死はなくならない。経済アナリスト・森永卓郎氏が語る。
「これは“日本はもう終身雇用はしない”という宣言です。日本の企業はこれまで就業規則に兼業禁止規定を入れ、“副業せずにうちの会社で働いてください。そのかわり定年後まで面倒見ます”という方針だった。それが終身雇用を維持できなくなったから、副業を解禁しているわけです。しかし、非正規の賃金は正社員の半分。残業代が減った分を副業のパート収入では補えません」
ではどうするか。森永氏は発想の転換が必要と説く。
「ある程度の年齢でキャリアに自信がある人なら、会社との雇用契約を解消してフリーランスになり、複数の会社から仕事を請け負う。これが賃金低下を伴わないやり方でしょう。“独立しても食べていける”という確信をもってからやったほうがいい」
なにより、副業するのであれば、「残業カットで空いた時間を使う」のではなく、「本業より稼ぐ」道を選ぶことが、老後資産を増やすために欠かせない選択だ。
※週刊ポスト2019年7月12日号