万一の災害時に、頼りになるのが火災保険などの損害保険だ。中でも地震保険は政府もサポートする公的な側面を持つ保険で、被害が起きた際は建物5000万円、家財1000万円を上限に、全損、大半損、小半損、一部損の4つの分類に応じて保険金が支払われる。
とはいえ、地震保険の保険料は決して安くない。保険料には地域差があるが、千葉、東京、神奈川、静岡の4都県は全国でも最高額で、加入を躊躇する人も多いだろう。できればお得に加入したいものだが、一般の保険と異なり地震保険はどの損保会社を選んでも保険料には差がない。
保険会社を乗り換えて安くすることはできないが、実際に地震が起きた時になるべく保険金の支払いを受けやすくすることは可能だ。地震保険は「建物」と「家財」に分けて加入するが、その内訳で支払額が大きく変わる可能性があるからだ。
損害保険ジャパン日本興亜によると、震度7を観測し200人以上が犠牲になった熊本地震(2016年)では、地震保険の「半損」の認定が、建物よりも家財で2.4倍多くあったという。要するに建物は無事でも家財がダメになり、家財に対して地震保険がおりるケースが多くあったということだ。また、2011年の東日本大震災でも、建物自体より家財の損害が大きかったが、家財に地震保険をつけていない被災者も多く、保険金を支払ってもらえなかったケースがあったという。
実際、地震保険加入率は、建物が約62.2%であるのに対し、家財は約40%にとどまっている。
保険金額が同じなら、対象が建物であっても家財であっても支払う保険料は変わらない。たとえば、2000万円の地震保険をかけるなら、建物だけにかけるのではなく、建物と家財に1000万円ずつ分けて加入すれば、支払う保険料は同じでも万一の際に支払いを受けられる可能性は高まりそうだ。
これは火災保険でも同様で、建物に集中させるより一部を家財の補償に充てることで、ちょっとしたボヤでも支払いを受けられる可能性は高まる。
地震や火事というと、家そのものの被害が心配が先に立つものだが、実際は建物より先に家財がやられるケースが多い。加入の際は分散を心がけた方が万一の際に役立ちそうだ。
文■森田悦子(ファイナンシャルプランナー/ライター)