1989年4月に消費税が創設された際、時の竹下登首相は、「高齢化への対応」と「財政再建」を掲げ、「国民に広く浅く、公平に負担していただく」と述べていた。だが、国民から徴収された税金の本当の使い途は藪の中でわかりにくくされている。一体全体、国民が支払ったあの増税のカネは何に使われ、どこに消えたのか。『週刊ポスト』取材班は増税の“遺跡”を探して全国に飛んだ──。
岡山県の桜の名所として知られる瀬戸内海国立公園内の王子が岳の山頂展望台から遊歩道を少し下ると、生い茂った木々の間から突然、地中海風の巨大な建物「王子アルカディアリゾートホテル」の廃墟が姿を現わした。
敷地の入り口近くには、「立入禁止」の看板がある。ここが“増税の遺跡”のひとつだ。
このホテルは環境省(当時は環境庁)が全国5か所を指定した国立・国定公園施設整備事業の第一号案件で、「瀬戸大橋が一望できるリゾート」を売りに同省(庁)所管の特殊法人「環境事業団」がリゾート法による国の融資約40億円で1993年に建設した。
地元・玉野市が出資する第三セクターの運営会社が買い取って経営する計画だった。
「瀬戸大橋の開通で国立公園のあの地域の利用者が増え、公害の増加を招かないよう利用者を分散させる目的であの案ができ上がった。あくまで公害防止の大きな目的があった」
環境事業団理事長は国会でそんな屁理屈をこねた。ところが、運営会社の資金繰りが悪化して内装工事が中断、一度もオープンしないまま競売にかけられてわずか約1億円で落札された。知る人ぞ知る廃墟スポットとなっている。