住んでみたい街の理想と現実には、得てして大きな差があるものだ。憧れのあの街は果たして本当に素敵な街なのか? まったくノーマークだけど、実は住みやすい街は? 今回は「溝の口」(神奈川県川崎市)について、ライターの金子則男氏が解説する。
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東急田園都市線は首都圏屈指の人気路線で、SUUMOの「住みたい街ランキング」の2019年版でも、BEST50に二子玉川、三軒茶屋、たまプラーザの3駅がランクイン(起点となる渋谷も入れれば4駅)。これらはいずれも急行停車駅ですが、同じく急行が停まる溝の口はランキングから漏れています。これは、いったいどういうことなのでしょうか?
鉄道は東急田園都市線と大井町線、さらに「武蔵溝ノ口」という別の駅名になっていますが、JR南武線も隣接しており、計2社3路線が使えます。田園都市線のラッシュは混雑が酷いことで有名ですが、大井町線はほぼ始発なので座れる確率も高いですし、大井町線が乗り入れるようになったことで、田園都市線のラッシュもいくらかマシになったようです。ただ田園都市線は、朝のラッシュ時は準急しか走っておらず(二子玉川~渋谷間は各駅停車)、遅延も日常茶飯事。快適な通勤通学には程遠い状況です。
道路状況はあまり良くありません。駅付近には国道246号と府中街道の2本の幹線道路が通っており、東名高速の川崎インターや第三京浜の出入り口も比較的近くですが、246号は交通量が凄まじく、府中街道は片側1車線。どちらもスイスイ走れるイメージはありません。また、駅周辺は細い道が複雑に交差しており、そこに路線バスもやって来るので、運転者も歩行者も気を遣うような状況。正直、車移動の快適さに関しては「微妙」としか言いようがありません。
東急文化と南武線カラーが混在
三軒茶屋、二子玉川、たまプラーザが人気ランキングに入りながら、なぜ溝の口は漏れたのか? 理由の1つは“東急色の薄さ”ではないでしょうか。上述の3駅はすべて東急の路線しか通っておらず、街の雰囲気もどことなくスタイリッシュ。一方の溝の口は、駅を出たペデストリアンデッキ付近の光景こそ“東急的”ですが、そこから地上に降りれば、オシャレ感よりも、庶民的な南武線のカラーがにじみ出て来るような印象です。