年齢を重ねた人ほど狙い撃ちで負担増を求められる2020年の「全世代型社会保障」改革。その最大の標的となるのが「医療費」だ。政府は医療費を抑えるための制度改革を次々と打ち出そうとしている。
【ポイント1】給料や年金から天引きされる保険料UP
その第一弾として、政府は2020年6月に自営業者や退職後の元サラリーマン(75歳未満)が加入する国民健康保険の保険料を値上げする方針だ。
厚労省が社会保障審議会に提示している資料によると、年間の値上げ幅は医療保険分が最大2万円、一緒に徴収される介護保険分が最大1万円にのぼる。保険料は年収や住んでいる市町村ごとに差が生じるが、同省の試算では年収400万円の中間所得層でも平均保険料は年間約8000円アップとなると見積もっている。
国保の保険料は2018年、2019年にも引き上げられており、3年連続の値上げになる。現役サラリーマンの健康保険料も値上げは避けられそうにない。
企業の健保組合が加盟する健康保険組合連合会は、平均の保険料率(医療保険と介護保険の合計)が現在の約10.8%から3年後には11.8%に上昇するという試算を発表している。サラリーマンの給料から天引きされる保険料が1割近く値上げされる見通しなのだ。
【ポイント2】75歳以上は病院の窓口で払うお金が激増
相次いで打ち出される負担増の背景にあるのが医療費の“2022年問題”だ。国民1人あたりの年間医療費は75歳未満の約22万円に対し、75歳以上の後期高齢者は4倍の約94万円に達している。現在の医療保険制度では、病院にかかったときの自己負担(窓口負担)は原則として69歳までが医療費の3割、74歳までは2割、75歳以上の後期高齢者は1割と、歳を取るほど低く抑えられている。
75歳以上にもなれば、ほとんどの人は年金生活で収入が減るうえ、病院通いも増えて医療費がかさむ。そのため、老後の生活を圧迫しないように医療費の自己負担を少なくするのが現在の社会保障のセーフティネット機能だった。