2019年は日本を代表する成長企業が次々と合併を発表した。9月には、ヤフーがファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOの買収を発表し、世間を驚かせた。さらに11月にはヤフー(親会社・Zホールディングス)とLINEが経営統合を発表。他にも、ヤマダ電機が大塚家具を買収するなど、有名企業の“大型結婚”が相次いだ。
平成の間に日本企業は数多くの合併を繰り返してきたが、事業拡大や合理化をめざすためとはいえ、競合していたライバル同士の合併は様々な軋轢を生んできた。
中でも大きな問題となるのが、人事や待遇面での「格差」だ。合併の主導権を握った企業が、その後も幅を利かせたケースは少なくない。『経済界』編集局長の関慎夫氏が挙げるのは「三菱UFJ銀行」だ。
「最初から三菱が主導権を持っていたので、みずほのような合併時の混乱は生じませんでしたが、現在でも三菱UFJでは三菱出身者でないと頭取になれないという慣例が続いています」
ジャーナリストの須田慎一郎氏は「こうした人事は以前からの体質だ」と指摘する。
「2002年に東海銀行と三和銀行が合併してUFJ銀行ができましたが、事実上は三和が東海を救済する意味合いが強かった。そのため、旧三和が旧東海勢を人事面で冷遇した過去があった。今度は自分たちが三菱に同じことをされたわけです」
逆に合併によってパワーバランスが変化したのが「みずほ銀行」だという。
「当初は第一勧業銀行(一勧)頭取の杉田力之氏がトップとなり、最大派閥の一勧主導の経営となるはずが、杉田氏に健康問題が発覚、リタイアしました。
するとノーマークだった旧富士銀行副頭取の前田晃伸氏が旧日本興業銀行側に接近し、旧第一勧業銀行の動きを封じて2002年にみずほホールディングスの社長に就任しました。“政治力”に定評があった前田氏の時代には、行内の実力者が次々とグループ会社に転出。前田氏は8年間にわたってトップに君臨し続けた」(同前)