愛する家族の「死」と向き合わなければならなくなったとき、あなたはまず、何を考えるだろうか。悲しみや不安のなかで、医療や介護にかかる費用を捻出したり、自宅の荷物の片づけ、遺産の分配についての話し合いなど、やらなければならないことは山ほどある。
そして、亡くなった瞬間に始まるのが「お葬式」の準備だ。一般的には、病院で家族が亡くなったら遺族が葬儀社に連絡を取り、遺体を自宅もしくは葬儀社に安置、喪主などの役割を決め、故人の知人や関係者に連絡をする。地域にもよるが、そのまま通夜の準備が始まり、翌日の夕刻に通夜、その翌日に葬儀と告別式を行い、火葬となる場合が多い。平均予算は100万~120万円程度といわれる。
心の余裕を持てないままバタバタと準備が進み、気づいたら終わっていたということも少なくない。さらに近年は、昔ながらの形式にとらわれない新たな「お葬式」を望む人々も増えており、半面、トラブルも増えたという。葬儀ポータルサイト「いい葬儀」の小林憲行さんが指摘する。
「『密葬』や『家族葬』に明確な定義はなく、家族と親しい友人など、小規模な参列者のみで火葬まで行う葬儀を指します。通夜や告別式などをせず、すぐに火葬を行うのが『火葬式(直葬)』です。
こういったお葬式は、“簡略化しすぎている”と親族で揉めるきっかけになったり、その内容を正しく把握していない人も多い。一般のお葬式とは予算も10万~30万円程度しか変わりませんが、“もっと安いと思った”と葬儀社とトラブルになるケースもあります」
最後の「舞台」となるお葬式こそ、気持ちよく故人を送りたい──そう誰もが願うが、幸せな葬儀はなかなか難しいようだ。
※女性セブン2020年3月19日号