新型コロナウイルスの感染拡大は世界同時株安をもたらし、実体経済にも影響を及ぼしている。収束の見通しがなかなか立たない中、企業経営を直撃する「見えない恐怖」はじわじわと広がりを見せようとしている──。
第一生命経済研究所のレポートによれば、新型コロナウイルスの日本経済への影響は「自粛や風評被害が深刻化した東日本大震災後と同程度の影響を前提とすれば、名目GDPが東日本大震災後の▲2.5兆円を上回る▲2.9兆円程度の下押しとなる。ただし、この試算は今年の前半中に国内での自粛が落ち着き、海外からの風評被害も秋までに落ち着くといった前提。長期化する場合には、想定以上の悪影響が及ぶリスクもある」という。
訪日外国人観光客によるインバウンドの減少、国内での外出や各種イベントを控える動きなどが広がったことで、少なくとも3兆円近いダメージが想定されるというのだ。
「一斉休校や在宅勤務によって、出前やテイクアウト、通販などの“巣ごもり消費”やテレワーク関連などは特需に沸く一方、これまで人を集めてきた宿泊、運輸などの『観光』関連をはじめ、『外食』、結婚式場、ライブハウスなどの『イベント』関連、さらには濃厚接触の可能性が高い『カラオケ』業界などの中には、倒産の危機に晒されるところが増えてくるのは必至だろう」(市場関係者)
帝国データバンクの調査では、新型コロナウイルスの影響による企業の倒産(法的整理・事業停止)は3月11日までに全国で8件発生していることが判明している。
2月14日に愛知県蒲郡市の老舗旅館「富士見荘」が中国からの団体客のキャンセルが相次いだことから事業停止したのをはじめ、感染が拡大した北海道でもコロッケを製造販売する「北海道三富屋」が2月25日に破産。3月2日には神戸港でクルーズ船「ルミナス神戸2」を運航する「ルミナスクルーズ」が民事再生法を申請するなど、新型コロナによる倒産が相次いでいる。