総務省の調査によると、全国には848万9000戸の空き家がある(2018年時点)。全国的に空き家が急増し社会問題となっている中で、別荘地でも過疎化が進んでいる。そうした中で埼玉県秩父地域の取り組みが注目を集めている。
バブル期には週末のキャンプや川遊び、ゴルフなどを目的に多くの別荘が建てられ、活況を呈した。しかし、バブル崩壊後、リゾート物件の価値は暴落。さらに維持費や固定資産税などの負担が所有者にのしかかり、売ろうにも誰も見向きもしない「負動産」になってしまうケースが増えた。秩父の物件もその例外ではなかった。
そうしたことから同地域は、地方公共団体が空き家の登録を募り、買いたい人・借りたい人の橋渡しを行う「ちちぶ空き家バンク」という取り組みを開始。この活動を通して地域活性化を図り、移住や二地域居住先として関心が高まっている。そして、現在までの物件登録数の累計は446件、成約は208件。これは県内トップの実績だという。
別荘地の魅力について「ちちぶ空き家バンク」委員長で、不動産業を営む依田英一郎さんに聞いた。
「私の住まいは古くからの住宅街にあります、そのコミュニティーの役員もしていまして、数十軒のお宅を担当しています。周りに新しい人はあまり来ておりません。私が子供の頃から同じご近所さんなんです。
もちろん、子供さんが家を継いでいるケースもありますが、田舎の住宅街の場合、近隣住民は何十年も住み続けている人が圧倒的に多い。そのコミュニティーに溶け込むのは別荘地よりハードルが高いかもしれません」
その点からも、別荘地は暮らしやすい。秩父の別荘地の3~4割が住宅として利用されているという。
「古くても20~30年前に住み始めた人たちだから、昔からの慣習はありません。つきあいをしたくなかったり、静かに生活したい人もいる。それは周囲も理解しています」(依田さん)