コロナ禍に迎えた今夏は、沖縄を除く全国で平年より約10日間も梅雨明けが長引いた。さらに9月以降も秋雨前線や台風の影響でぐずついた天気が続き、東京都心では9月27日まで19日連続で降水を観測。
7月には熊本県南部の球磨川をはじめとした河川が氾濫する大雨被害も相次いだ。秋になり、大雨への警戒はまだまだ緩めることはできない。気象予報士の森朗さんが指摘する。
「近年、インド洋や太平洋の海面温度の上昇が止まらず、今年は日本近海の海水温度が過去最高を記録しました。海水の温度は空気と違って下がりにくいため、大気中には長期間水蒸気が発生し続けている状況です。今後、強い勢力の台風を発達させる可能性があります。
30年前であれば、10月になれば台風シーズンは終わりだといえましたが、いまは10月が終わるまでは身構えねばなりません」
実際に、昨年の台風19号が日本に上陸したのは10月12日から13日にかけてのこと。強い勢力を保ったまま列島を縦断し、福島県で32人、宮城県で19人の死者を出すなど東日本に甚大な被害をもたらした。神奈川県川崎市では武蔵小杉駅周辺が水没し、首都圏全体で交通機関が乱れ、パニックとなった。
東京都職員として江戸川区土木部長などを歴任、『水害列島』の著書もある土屋信行さんが解説する。
「武蔵小杉エリアは、かつて多摩川の支流が流れる低地でした。以前は工場地帯として使われていた地域でしたが、工場が撤退した跡地を宅地化し、道路や公園を造って見栄えよく形を整えた。住む場所としては最悪の地形条件なのに、自然災害リスクが見えにくくなっているのです」