10月16日に劇場公開されると、公開3日で興行収入46億円という記録を打ち立てた『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。原作コミックは『鬼滅の刃』(集英社)は、10月2日に最新22巻が発売され、シリーズ累計発行部数は電子版も含めて1億部を突破するという。
まさに社会現象となっている『鬼滅の刃』。一体、何がそんなに人々を惹きつけるのだろうか──。
舞台は大正期の日本。主人公・炭治郎の衣服は学生服のような詰襟の隊服の上に、黒と緑の市松模様の羽織。ほかの登場人物も含め、「大正レトロ」を想起させるファッションが、作品を彩る魅力の1つになっているという。
「大正時代は現代のあり方を見直す際に立ち戻るべき“起点”になる」と話すのは、歴史学者の山室信一さんだ。
「現代日本の生活の基礎は大正で築かれたと言っていいほど、重要な時代です。『大正デモクラシー』という言葉があるように、大正は前向きで明るい時代というイメージがあるかもしれません。しかし、実際は第一次世界大戦と第二次世界大戦の谷間で、“戦前であり戦後”。明日はどうなるかわからない不安定な時代でした。新型コロナで動揺している令和と大正は、まさしく『不安定さ』という点が共通し、現代人が物語に共感を覚える根底になっているように思います。
もう1つ、歴史のなかでは特に若年層に『不安の高まる時期に、ノスタルジーを感じるものから新しい娯楽と可能性を見出そうとする感覚』が生まれることが多い。だから、いま大正を舞台にした物語が流行っているのかもしれませんね」