30代で庭付き一戸建て、マイカー、夫婦に子ども2人、犬1匹──。アニメ『クレヨンしんちゃん』の野原家のスペックだ。当時の“普通の家族像”は今や“理想”ともいえる存在になっているようだ。
『クレヨンしんちゃん』は、臼井儀人氏が1990年に『漫画アクション』(双葉社)で連載を開始。1992年にはアニメがスタートし、今年で28年目に突入した長寿番組だ。そんな国民的アニメを放送当時から見続けてきた子どもたちは、野原ひろし(35)、みさえ(29)と同じアラサー世代になってきている。大人になった彼らは今、何を思うのか。
30代男性会社員・Aさんは大学卒業後、粛々とサラリーマン人生を送る中で「ひろしには遠く及ばない」と苦笑いする。
「放送開始当時は小学生で、特に何も思わず、野原家のような家は“当たり前”だと思っていましたが、ひろしって、どう考えてもスペック高いですよね? 30代妻子持ちで、郊外とはいえマイホームも購入している。僕の年収は間違いなくひろしより低いと思います(笑)」
アニメでは、ひろしが手取り30万円で、みさえから「安月給」と言われているようだが、ボーナスも含めれば年収は500万~600万円はあるのではないかと推察される。しかも、東京・日本橋(※霞ヶ関という設定も)の商社の営業部係長で、部下からは慕われ、上司からの信頼も厚い。
「僕は大卒でも年収400万円後半で、役職も名ばかり。遠い夢物語を見ているような感覚に陥ります。でも、これって当時の日本の“標準”だったわけですよね? 確かに僕の60代後半の父親が、なんとなくひろしのスペックに近い気もします。すごく羨ましいですね。僕は、このままだと結婚もマイホームも縁のない人生になりそうです……」(Aさん)
お茶の間に笑いを常に提供してきた『クレヨンしんちゃん』だが、「下品」「教育に悪い」などと批判されることも少なくなかった。実際、日本PTA全国協議会の「子どもに見せたくない番組」の上位が定位置だったのだ。