「NHKをぶっ壊せ!」と言っていた「N国党」は党名を変更してしまったが、NHK受信料制度への国民の不満は根強く燻っている。そうしたなか、菅義偉首相が総理就任の直後に内閣官房参与に起用した高橋洋一・嘉悦大学教授が大胆なNHK改革案をブチ上げた。
まずは、教育放送「Eテレ」のチャンネル売却だ。
「Eテレのチャンネル(周波数帯)を売却して携帯(通信)用に利用すれば、通話だけではなく、もっと多種多様の映像コンテンツを同時に配信できる。Eテレが占有していた電波の一部を政府のデジタル庁が使えば、確定申告などのサービスにも利用できる」(高橋氏)
Eテレにはいい番組があるという人は少なくないだろうが、「それなら政府がそれを買って配信すればいい。NHKは国会の予算委員会の一部だけテレビ中継しているが、国はすでに国会中継を全部ネットでライブ配信しているわけです」と高橋氏は言う。さらに高橋氏は「電波オークション」にも言及する。
日本では2019年の電波法改正で競争入札方式の電波オークション導入が検討されたが、総務省やテレビ局の抵抗で見送られた。
「世界で電波オークションをやっていない国は日本と中国、北朝鮮くらいです。今年のノーベル経済学賞は、電波オークションの実務的な仕組みを考案したスタンフォード大学のポール・ミルグロム教授とロバート・ウィルソン名誉教授に与えられ、受賞理由に『これで世界各国の納税者は大きな利益を得た』とある。
しかしNHKのニュースでは受賞理由は詳しく掘り下げない。『世界各国に日本が含まれない事情』を説明しなくてはならなくなるからです(笑い)。
電波の世界から見ると、テレビ放送も通信も同じです。テレビはメディアとして衰退しつつあり、映像コンテンツは通信で見る時代になっている。同じ映像を流すことができて、コストは通信のほうがはるかに安いのだから当然でしょう。それなのに、日本はまだテレビ局が多いから電波利用に無駄があり、通信用の電波が足りない。
日本でも電波オークションを導入し、Eテレのチャンネル売却によって通信に利用しやすい周波数帯を携帯キャリアに売却すれば、受信料引き下げだけではなく、携帯向けの設備投資は少なくて済むようになる。スマホの利用範囲が広がって新たなビジネスが増え、携帯料金が下がるという効果も見込まれる」(高橋氏)
※週刊ポスト2020年12月11日号