年末に向け、新年の食卓を彩るおせちの重詰め作業が佳境を迎えている。社員数が30人に満たない福岡のある中小企業は、冷蔵よりも高い安全性を保持できる冷凍おせちで急成長を遂げ、業界で大きな注目を集めている──。
福岡空港から車で約15分。のどかな住宅地に、いまや600億円規模とされるおせち市場の中で、“福岡の怪物”と呼ばれる会社が存在する。「博多久松」ブランドで通販おせちに特化している久松だ。
一般的に通販おせちには冷蔵、冷凍の2種類があり、冷凍おせちは家庭で自然解凍するまでの保存期間が長く、利便性が高い。凍った状態のため中身が崩れにくい利点もあり、全国各地への輸送にも向いている。
久松は冷凍おせちをはじめ、お食い初めなど「晴れの日」向けの商品を製造販売している。役員・社員数25人と会社規模は小さいが、冷凍おせちだけで年間約15万個を製造販売、20億円超を売り上げる。ネット通販サイト「楽天市場」が各グルメジャンルのナンバーワン商品に贈る「楽天グルメ大賞」を累計13回受賞するなど、通販おせち業界を牽引する“小さな巨人”だ。
工場では11~12月中旬、おせち製造作業がピークを迎え、1日120人態勢でパート従業員が一糸乱れぬ連携で次々と三段重おせちを完成させていく。同社が展開するおせちは6500~5万円の商品が16種類。様々な家族構成に対応するため1人前~6・7人前まで揃う。リピーターが約4割を占め、各おせち商品は内容の約3分の1を毎年リニューアルしている。