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JR東日本・深澤祐二社長「駅は切符を売る場所ではない」の真意

JR東日本・深澤祐二社長は今後の鉄道ビジネスをどう見据えているのか

JR東日本・深澤祐二社長は今後の鉄道ビジネスをどう見据えているのか

「JR発足以来最大の危機」──。東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)の深澤祐二社長(66)はコロナ禍の経営状態をこう表現した。今年4月から9月までの半年間の中間決算は、2643億円の赤字。1987年の国鉄民営化以来、最悪の業績をどう挽回していくのか。深澤社長に話を聞く。

──このシリーズではまず、平成元年(1989年)当時を伺っています。

深澤:私は1978年に国鉄に入社しました。その頃すでに国鉄の労使問題が取り沙汰されており、組織は混乱の最中にありました。

 分割民営化でJR各社が発足した1987年からは、日本国有鉄道清算事業団で理事長秘書を務めました。当時の理事長は国鉄最後の総裁を務めた杉浦喬也さん(故人)です。清算事業団は、主に長期債務の償還や余剰人員の再就職促進などを行ないました。

 他の会社を回って職員の受け入れ先を探すのは大変な仕事でしたが、国鉄を去らなければならなかった人たちはもっと苦労をした。二度とこんなことがあってはならないと強く思いましたね。

 JR発足時、我々は「鉄道の復権・再生」を大きな旗印として掲げました。それから約30年、東日本大震災などの試練もありましたが、地道な取り組みが実りその目標は達成できたと考えています。

──しかし今回のコロナ禍は、JR東日本発足以来の大打撃となりました。

深澤:テレワークの浸透など新しい生活様式が定着し、コロナが収束すれば鉄道がかつての利用状況に戻ると考えるのは楽観的すぎるでしょう。今年度末までに通勤客はコロナ前の8割強に回復すると予測していますが、完全に元通りになることはない。そうでなくても日本は人口減少局面に入っており、いずれは東京近郊にもその波がやってくる。それを見据えて動いていかなければなりません。

 当社の事業構成比は鉄道など運輸事業が7割、それ以外が3割となっていますが、2018年に「変革2027」という10年後を見据えた中長期経営計画を打ち出し、事業構成比を7対3から6対4にしていくロードマップを描きました。

 これまで相互直通運転による利便性向上や、駅ビルや駅ナカ開発など駅を軸にしたビジネスモデルでお客様のニーズに応えてきましたが、今後のビジネスはさらに広がりを持たせていかなければならない。コロナでその動きをさらに加速させる必要があると感じています。

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