「NHKは『Eテレ売却』で受信料を半額にできる!」(本誌・週刊ポスト12月11日号)──この記事で内閣官房参与の高橋洋一・嘉悦大学教授が提起した「Eテレ(教育テレビ)売却案」が大論争になっている。
高橋氏の改革案の要点はこうだ。低視聴率のEテレは電波という国民の共有資産が有効活用されていない。ならば電波オークションでEテレの周波数帯を売却し、番組をネット配信すればいい。NHKは周波数帯売却で得た資金を受信料引き下げや経営スリム化の費用に充てられる──という内容だ。
この提案に対し、NHKトップの前田晃伸会長は12月3日の会見で真っ向から否定した。
「Eテレは、NHKらしさの1つの象徴だと思います。それを資産売却すればよいとか、そういう話には全くならないと思います」
さらにSNSでも、Eテレ売却に反対する声や受信料引き下げを求める声などがあがり、賛否両論となっている。
本誌・週刊ポストにもNHKに対する様々な不満が寄せられた。受信料制度そのものに対する疑問から、「公共放送といいながら娯楽番組ばかり」「受信料を払っても再放送ばかり見せられる」――などの放送内容への批判も含めて、共通するのは受信料が高すぎる(BS契約含めて月額2220円)という不満だ。
NHKの受信料収入は年間約7115億円(2019年度)、5年前より620億円も増えた。ただ、全員が納得して払っているわけではない。NHKが未契約世帯に受信料支払いを求める訴訟を積極的に起こし、受信契約の締結と「受信料の支払い」を命じる最高裁判決(*注)が出たことで徴収率が大幅にアップした。
【*注/2017年に最高裁判所が、受信設備を設置している国民はNHKを視聴しない場合でも、契約を締結し、受信料を支払う義務があることを認める判決を下した】
その結果、いまやNHK本体と子会社の内部留保(連結余剰金)は3700億円を超える。受信料が余っているのである。
高収益体質はコロナ禍でも健在だ。NHKは今年度上半期(4~9月)の中間決算で過去最高の449億円の黒字(事業収支差金)となった。受信料収入は安定しているうえ、番組の制作が延期されて制作費が大きく減ったためだ。対照的に民放はコロナ不況のCM収入減で在京キー局5社のうち4社が大幅な減益に陥っている。
これだけカネが余っていてもなお、NHKは受信料の取り立て強化を図ろうとしている。