長年寝食をともにしてきた家族同士であれば、安心感から軽い気持ちでお金の貸し借りをしてしまったものの、なかなか返済されないというケースもある。家族間での金銭トラブルについて、実際の相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
3年前、姉が飼い犬の手術をする際、手術代として30万円を貸しました。そのときは、「必ず返す」と言っていたのに、いまだに返金がありません。姉にも家庭があり、家計が大変なのかと思ってそのときはお金を貸しましたが、この3年の間に子供と旅行に行くなどしていて、本当にお金がないとは思えません。姉妹間でのお金の貸し借りは、泣き寝入りするしかないのでしょうか。
【回答】
泣き寝入りするかどうかはあなた次第です。お金を渡したことが事実であれば、「返せ」と言うことができます。
借金を返すように求められても返さない人は、
(1)「借りてない」ととぼける
(2)「もらった」と言い訳する
(3)「返した」と強弁する
(4)まったく相手にしない
(5)「しばらく待ってくれ」と手を合わせる
これらのどれかでしょう。
(1)のように借金を完全否定されると、借用書や受取書をもらっているか、お姉さんの預金口座に振り込んでいなければ、あなたはお金を貸したことを証明するのに窮するでしょう。
逆に、相手がお金を受け取ったことを認めながらも返す義務を否定する場合、相手は(2)の贈与や(3)の返済を証明しなければなりません。30万円は日常のちょっとした貸し借りの範囲を超えた大金ですから、一般的には贈与はしないでしょう。また、借金の返済は証文を取り戻すか、領収書や銀行口座への振り込みの記録があるのが普通ですから、こうした書類がないと返済の証明ができないことになります。
(4)の返済要請に無視の態度をとる場合には、言い分すらわからず、協議は不可能です。
そこで、相手が(1)から(4)の対応を続ける場合には、返してもらうために裁判で訴えるしかありません。