中国の輸出入が急増している。1、2月の輸出(人民元ベース、以下同様)は50.1%増、輸入14.5%増となった。比較対象となる前年の水準は、新型コロナウイルスの影響で低かった。2020年1、2月の輸出は16.1%減、輸入は2.5%減であり、今年の好調は昨年の反動による部分もある。しかし、2019年と比べても、輸出は26.0%増、輸入は11.6%増と二桁の伸びを示しており、反動以外の要因も大きい。
輸入が強い理由として、国内経済がしっかりしているという点が指摘できる。1月の製造業PMIは51.3、2月は50.6で、昨年3月以来連続して景気判断の分かれ目となる50を超えている。消費の回復は今一つだが、生産、新規受注がいずれも強い。電機製品、電子部品などの輸入が全体を牽引している。
輸出規模について国別にみると、最大はアメリカで伸び率も高く、75.1%増加している。第2位の欧州は51.9%増、第3位のASEAN(東南アジア諸国連合)は43.2%増で、アメリカの伸びは突出している。
全体の輸出に関しては、コロナ禍の影響で各国の生産力が落ち、回復が早かった中国からの調達を急増させたといった要因もある。しかし、アメリカの場合、製造業が空洞化しており、国内では生産能力が著しく低い産業が多い。中国製造業との間では棲み分けができている。アメリカはコロナ対策によって消費需要が刺激されているが、それで中国からの輸入が増えていると考えられる。
バイデン政権は、発足当初、トランプ政権時代の対中強硬策を転換するとみられていた。しかし、ファーウェイ(華為技術)などの中国企業をエンティティリスト(輸出規制の対象となる企業リスト)から外すようなことはしておらず、また、政治的には欧州、日本、オーストラリアなどの同盟国を巻き込んで中国包囲網を強化しようとする動きもある。
皮肉なことに、政治が中国とのデカップリングを進めようとしている一方で、経済は結びつきが強まるといった現象が起きている。