全世界が新型コロナウイルスに翻弄され、「今後、日本はどうすべきなのか」という疑問の声があちらこちらから上がっている。菅義偉首相は、日本をどのような方向に導けば良いのか? 経営コンサルタントの大前研一氏が、日本経済の発展のための施策を提言する
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菅義偉政権は、何もかも場当たり的で後手後手だ。たとえば、新型コロナウイルス対策では緊急事態宣言の再発令が遅きに失したし、ワクチン接種も他の先進国に大きく後れを取っている。さらに、菅首相の長男が勤める東北新社やNTTによる高額接待問題では菅首相の“古巣”である総務省が右往左往している。
これは安倍晋三前首相の「モリカケ桜」(森友学園・加計学園・桜を見る会)問題と同様の構図であり、その一方で昨年9月の菅政権発足以降、政府が早急に取り組むべき国家的課題は何も解決していない。このため国民の間では菅政権に対する不満が鬱積して将来の不安がますます募っている。
そういう状況の中、私は講演や経営者の勉強会などでしばしば「日本はどうすればよいのか」「どうしたら日本経済は低迷から抜け出せるのか」といった質問を受ける。だが、すでに本連載(第729回、週刊ポスト2021年2月26日・3月5日号)で述べたように、その質問に答えはない。21世紀は「メガリージョン(大都市とその周辺都市で構成される新しい経済活動単位)」の時代であり、もはや田中角栄的な「国土の均衡ある発展」は不可能だからである。
にもかかわらず、いまだに政府は「日本」や「日本経済」という次元で考え、国家の均一的な発展を目指しているから、いくら景気対策や経済対策をやっても効果がないのである。中国のような独裁国家は別として、アメリカにしろEUにしろ、繁栄は「国家」という枠組みの中で創り出せるものではなくなっている。新しい産業が興る完全な規制撤廃を行ない、世界から富・人材・企業・知恵を呼び込んだメガリージョンだけに繁栄が訪れるのだ。