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退職金を南ア通貨に投資した60代男性 価値がみるみる下がり青ざめる

退職金の運用は“うまい話”に要注意(イメージ)

退職金の運用は“うまい話”に要注意(イメージ)

 まとまったお金が手に入ったのに、それを自らの手で消失させてしまう人たちがいる。3年前に定年退職し、約1800万円の退職金を手にした60代男性は「超低金利の日本で銀行に預けても意味がない」と考えて外貨預金に手を出したが、大失敗に終わった。

「証券会社に勤めていた友人から、金利が高い国での外貨預金が得だと聞きました。南アフリカの通貨『ランド』は金利5~6%だと教えてもらい、退職金の半分ほどを使って外貨預金を始めた。ところが、1ランド=9円くらいだった為替相場で、どんどん円高が進んだんです。『ランド』の価値がみるみる落ちていくのを見て、毎日青ざめていました……」

 男性は結局、1ランド=7円のところで解約。金利が高くても通貨そのものの価値が20%以上、急落したのだから大損だ。為替手数料も含めて200万円ほどを失った。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏が指摘する。

「退職金が入ったり、親の資産を相続したりといった“まとまったお金が入った時”に、投資で大失敗する人は多い。大金を手にして気が大きくなっていることもあってか、分散せずに一括で多くの資金を投じてしまう傾向が強いのです」

 大金を手にすると、様々なところから“うまい話”がもたらされることもある。

「よく聞くのは、公立校の教員が退職金投資で失敗する例です。公務員だから退職金の水準は比較的高いし、たいていの場合は証券会社などの金融機関に勤める元教え子がいる。

 そういうところから、退職祝いの連絡とともに投資の勧誘があるわけです。教師だと、元教え子に“そんなことも知らないの?”と言われたくないから、リスクに関して突っ込んだ質問がしづらいという要因もある。もちろん、職業を問わず、口座にまとまった入金があれば、金融機関から様々な営業の連絡が入ることが多い」(深野氏)

 落とし穴にはまらないために、大きな額を手にしたら数か月から半年は一切手をつけず、冷静に用途を考えるのがいいと深野氏は指摘する。

「投資に関心があるのなら、大金が手に入る前に一度、少額でやってみて経験を積むことも大切です。実際にやると、自分に向いているかが体感できるはずです」

 お金を手にしてからでは、適切な判断が難しくなると肝に銘じたい。

※週刊ポスト2021年6月11日号

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