中国本土最大の配車アプリ企業である滴滴出行(DiDi)が、6月30日にニューヨーク証券取引所に上場を果たした(ティッカーはDIDI)。ところがその直後の7月4日、個人情報の収集に関して“インターネット安全法”で定める規定に著しく違反しているとして、中国当局からアプリの新規ダウンロード停止が命じられた。
新規顧客の獲得が難しくなるのと同時に、当局から国家が定める規定通りに個人情報が守れるように組織改革を迫られそうだが、それには時間やコストがかかりそうだ。今回の決定は今後の業績に大きな影響が出る可能性がある。
こうした事態の背景には、滴滴出行とグローバル企業、金融機関、投資家、中国政府との間にあるウイン・ウインの関係を、アメリカ政府が壊そうとしている構図も見え隠れする。
そもそも、20代の若者が配車アプリ事業を思い付いてわずか十年足らずでどうやって時価総額580億ドル(6兆3800億円、7月9日終値ベース、1ドル=110円で計算、以下同)の上場企業を作り上げることができたのであろうか。“その謎”を知る必要がある。
1983年生まれの程維会長がアリババをスピンアウトして前身となる企業を設立したのは2012年7月。設立から約3か月後にはアップル向けのタクシー即時予約アプリを開発、その年の12月にはアーリーステージの企業に資金を提供するベンチャーキャピタル(GSR Ventures)から300万ドル(3億3000万円)の資金を手に入れた。
その後、2013年4月にはテンセントから1500万ドル(16億5000万円)を調達。2014年1月にはCITIC産業ファンドなどから1億ドル(110億円)、2015年7月には中国平安保険、アリババキャピタル、テマセク(シンガポール政府の投資会社)などから30億ドル(3300億円)、2016年5月にはアップルから10億ドル(1100億円)の資金を調達した。
2016年8月にはUberの中国業務を吸収合併したが、それによりUberの投資家であった百度も同社の投資に加わった。そして2017年には現在の最大株主となるソフトバンクグループが投資した。設立間もない企業がグローバル企業、金融機関からとてつもない額の資金を手に入れている。