家族や親族間で争いに発展することも少なくない遺産相続。特に、故人の収入を頼りに生活していた家族がいる場合、相続がこじれることもあるという。実際にあったある40代男性の体験談とともに、そうしたトラブルに遭った際はどうすべきか、専門家のアドバイスを紹介する。
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「お兄ちゃんは大きな会社の正社員なんだから、こんなわずかな遺産なんていらないわよね。私なんて離婚して、ひとりで苦労して2人も子供を育てているのよ」
過労のため64才で亡くなった父の告別式の後、控室で妹・S美(34才)が、さも当然だとでもいうようにこう提案してきて、私たち家族を驚かせました。
7年前に離婚して子供と共に実家に戻った妹は、パートを転々としつつ、趣味であるアイドルの追っかけに勤しむ日々。母は5年前に亡くなっているので、追っかけのために遠征するときなどは、家事や育児をまだ現役で働いている父に任せっきりだったとか。物静かな父は、生活費すら払わない妹を叱ることなく、孫のためと頑張ってきたものの、ついに過労に倒れたというわけです。
父は急死だったため、遺言書がなく、時価500万円の宅地と、現預金300万円程度を妹と私で2分割することにしました。ところが、妹が全部自分によこせと言ってきたわけです。私も家族の手前、
「いまの家でそのまま暮らせるよう、宅地はS美がもらっていいよ。おれだって、子供が小さいから家計は厳しい。現預金をもらえないかな。これでもS美の方が取り分は多いわけだし」
と、提案したところ、血相を変えたS美は、
「強欲爺ィね! お父さんのお金は一緒に暮らしていた私がいたからこそ稼げたお金よ。だったら私が稼いだお金のようなものじゃない。それを取るなんて、この泥棒が!」
と、大声で怒鳴り散らす始末。話の通じない妹には何を言っても火に油。こちらの現金分割分を100万円まで下げても納得せず……。とにかく1円も私に取られたくないのだとか。仕方がないので弁護士を立てて話し合いをすることになってしまいました。これじゃあ、余計にお金がかかるのになあ。