現在、急ピッチで進められている「ワクチン・検査パッケージ」の実用化。新型コロナウイルス感染症のワクチン接種証明書や陰性証明書を提示することにより、行動制限が緩和される見通しだ。政府は年内にも、書類形式ではなく、スマホなどで表示するデジタルの「ワクチンパスポート」を導入する方針で、パスポートを提示することで旅行、宿泊、飲食などさまざまな場面で割引などの特典が受けられるという。
ワクチン接種者への優遇措置は今後さらに拡大していく見込みだが、裏を返せば、ワクチンパスポートを持たない人はかなり損をするということになるのかもしれない。諸外国の動向を見ると、損をするだけでなく「自由」まで奪われそうだ。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが話す。
「アメリカ本土やフランス、ハワイのホノルルなどでは、ワクチンパスポートを所持していないとレストランやスポーツジム、映画館などを利用できません。高級レストランだけでなく、ショッピングモールのフードコートでもワクチンを接種していないと入場できないケースがあります。
またワイキキのリゾートホテルは、従業員や宿泊客のワクチン接種を義務化しました。ワクチンを打たないと、いくらお金を積んでもワイキキのホテルには泊まれなくなりそうです」
パリ在住のジャーナリスト・羽生のり子さんがフランスの事情を語る。
「スーパーや個人店など小規模な店舗の買い物ではワクチンパスポートは不要ですが、大型のショッピングセンターやデパートでは必須で、入り口で警備員がパスポートの有無をチェックします。
レストランやカフェでは絶対にワクチンパスポートが必要です。不所持の人を入店させたお店が、警察に摘発されて営業停止になったこともありました。公共交通機関でも、通勤の地下鉄などでは不要ですが、県をまたぐような長距離電車では必要になります」
スイスは16才以上の場合、屋内の飲食店や文化・スポーツ施設、1000人を超える屋外イベントに参加するならワクチンパスポートの提示を求められる。ルールに違反すると約1万2000円の罰金が科せられる一方、パスポートを持つ人だけが集まったら、屋内のレストランなどでもマスクをしなくてもよい。