医療において、専門家である医師の“力量”に左右される要素は大きい。それは治療についてだけでなく、病気を発見する検診についても同様だ。湘南鎌倉総合病院・院長代行の小林修三さんが語る。
「検診においても、“最善”を提案できるかどうかはその医師の経験と知見次第です。たとえば乳房を挟まれる痛みあるいは裸になる恥ずかしさのある乳がんのマンモグラフィー検査が憂うつだという患者は少なくない。
しかし最新の検診ではこうした心配のないMRIによる乳房検査が普及しつつあります。これはTシャツを着たままで受けられるうえ、痛みもない。提案してもらえるかどうかで乳がんの早期発見率が変わり、その後のQOL(生活の質)にも大きな差が出るでしょう」
高額な費用の検診の中には、注意すべきものもある。医療問題に詳しいジャーナリストの岩澤倫彦さんはこう話す。
「一部の医療機関が“全身のがんを早期発見できる”と宣伝しているPET検査は要注意です。弱い放射性物質を注射してからCTスキャン画像を撮ると、がんの部位がわかるという仕組みの検査ですが、必ずしもすべてのがんを早期発見できるわけではありません。肺や脳などのがんの早期発見は期待できますが、胃がん、肝臓がん、膀胱がんなどの早期発見は難しいという現実があります。それでも、大半のPET検査費用は10万円以上と高額なうえ、がんの自由診療と同様に金額が高ければ効果が高いと思い込み、ほかの検査を受けない人も多い。万能ではないことを知っておいてほしい」