教育費・介護費・家のローンなどが一気に振りかかる“大支出期”の50代。2019年の厚生労働省の調査によれば、50代世帯の平均所得金額は756万円あるものの、21.8%が貯蓄ゼロ(※金融広報中央委員会の調査。世帯主が50代の2人以上世帯の場合)となっている。50代になって貯金ゼロとなる可能性は誰にでもあるが、もし自分がそうした状況になった場合、どのように立ち向かうべきか。専門家に対策を聞いた。
まず、固定費として大きな家賃はどのように見直すか。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんは「引っ越しの前にできることをやる」と考える。
風呂内さんは現在、地元の岡山県にマンションを所有している。マンションは賃貸に出し、自身は東京で民間賃貸を借りて夫婦で暮らしている。仮に貯金がゼロになっても、住まいを変えるのは最後の手段だと話す。
「家賃は手取り収入の3割までが原則。わが家の場合、もともと1~2割に収めていますが、一時的に貯金がゼロになった場合、まずは通信費などほかの出費の見直しを行い、それでも厳しければ、最後に転居を考えます。その場合、方法は3つ。【1】UR賃貸住宅や特定優良賃貸住宅など、初期費用を抑えられ、更新料がない住宅を借りる。【2】岡山の所有物件に住む。【3】実家に戻る。このなかで現実的なのは【1】ですね。いまの仕事を続けるために、東京近郊の物件を探します。いままで貯金ができなかったなど、根本的な改善が必要な場合は、実家に戻り、働きながら貯金します」
持ち家がある場合は、現金が乏しいと売ろうと思いがちだが、安易に売らず、長期的に見てプラスになるか否かを見極めるべきだという。
「私だったら、売りません。いま住んでいる家を売ると、次に住む賃貸物件を探さなければならず、そのための初期費用や毎月の家賃がかかります。その住居費が、売却利益に収まれば売った方がプラスになりますが、よほど資産価値の高い物件でなければプラスにはなりません。売らずに固定資産税などの維持費だけで住み続けた方が、長い目で見て支出を抑えられます」(風呂内亜矢さん、以下「」内同)